ネタバレ注意
『それじゃあキミを死神として採用するね』
唐突なスタートでした。
この本を読んだのは、タイトルにひかれたからです。
時給300円の死神。
死神のアルバイト?
どういうこと?
読んだ本
時給300円の死神
著者:藤まる
本の概要
本の裏表紙より
「それじゃあキミを死神として採用するね」
ある日、高校生の佐倉真司は同級生の花森雪希から「死神」のアルバイトに誘われる。曰く「死神」の仕事とは、成仏できずにこの世に残る「死者」の未練を晴らし、あの世へと見送ることらしい。
あまりに現実離れした話に、不審を抱く佐倉。
しかし、「半年間勤め上げれば、どんな願いも叶えてもらえる」という話などを聞き、疑いながらも死神のアルバイトを始めることとなり―。
死者たちが抱える、切なすぎる未練、願いに涙が止まらない、感動の物語。
まとめ(と独り言。)
死神のアルバイトがあることを半信半疑ながら普通に受け入れる主人公。
またそのアルバイトの時給は300円でした。
学生の場合は1日4時間。勤務時間なんてあってないようなものだけどね。
の言葉通り、勤務時間もあいまいなもので、勿論勤務中の諸経費などは自腹…
まさにブラックなアルバイトです。
またその内容は「死者」の未練をはらし成仏させるという、難易度の高いものでした。
主人公である佐倉くんはその生い立ちも少し複雑です。
詳しくは後に出てくるのですがこのアルバイトをすることになったのは…
- ある理由で足をけがしてしまい力仕事が無理
- 父親が逮捕され、会社も倒産
- 子どもの頃、親権を手放した母親の現在を見たい
- また「死神」の任期を全うするとなんでも希望が叶う
といった理由によるものです。
作中では未練を残して死にきれない者を「死者」と呼んでおり、この「死者」が死んだことをなかったことにされ、普通に生きているのですが、この与えられた時間のことをロスタイムと表現しています。
このロスタイムに関してはきちんとした定義はなく
ロスタイムを与え、自分の未練は晴らしようがないと死者に諦めさせられる。
という考え方もあるようです。
死者の未練を晴らすように死神がお手伝いするのですが、死者の未練は様々です。
そして「死者」というのは必ずしも善人ではなく、死んでしまったことにより自分を見つめ直す、後悔する時間がたっぷり与えられてしまうのでロスタイムは辛い…と感じる死者もいます。
ストーリーはこの死神のアルバイトを通して、色んな意味で衝撃的な展開になっていきます。
僕の感心としてはやはり佐倉くんが最終的に何でも願いが叶う「希望」を何に使うのか…
だったのですが、全く予想のできない使い方でした。
というのもヒロインが2人いるようないないような…
そんな微妙なストーリーだったので…うーん、悩ましい展開ではありますが。
またこの本の特徴としては、序盤と終盤でひとつの物事に対しての考え方というか描き方が変わっていくことがあげられます。
例えば父親に対しての描写ですが序盤では
父親が馬鹿な事件を起こして
のような、どうしようもない父親だったように書いてあるのですが、
後半の父親の登場シーンでは
尊敬できる父親
優しさは父親から受け継いだもの
のような、事件を起こしたのは優しさからきたものであると認めています。
僕の中では、やはり死神のアルバイトを通して主人公の気持ちや、考え方がいい意味で変わっていったからだろうと勝手に解釈しました。
この本の中で、花森の謎がいくつかあるのですが、少し分かり易すぎたかな…
という印象でしたが、そこは大した問題ではないのかもしれないですね。
はじめのうちは、「死神」が「死者」を救っているという解釈なのですが、物語が進むうちにそれも変化していきました。
「死神」が「死者」を救う。それに加えて死者を通して死神が救われる。
これこそが、この世界の真実ではないだろうか。
これがまさにこのストーリーのまとめかな…と感じました。
関連作品